お客様からのご注文で、TOEIフルオーダーメイドのスポルティーフを製作しました
現在では廃番になってしまったカンパニョーロ・アテナコンポーネントを中心に、グランボア・ホイール(タイヤ・チューブ・リム・ハブ)センタープルブレーキ、ニットウ・ハンドル&ピラー&ボトルケージ、ブルックス・バーテープ&サドルとパーツ類は「定番」とも言えるアッセンブルとしています
フレームの最も解りやすい特徴であるラグとメッキ
ラグはTOEIオリジナルカットラグで、このラグだけで5万円以上もする高級品です
TOEIオリジナルラグは、一般的なラグに別途鉄パイプをTIG溶接し、ハンドカットで丹念に1個1個製作されています
いつも同じカットなのだから大量生産しちゃえば良いのに・・・なんて大槻は考えてしまいますが、手作業を大事にする東叡社らしい良心だと思います
ハンドカットですから基本デザインは同じでも、微妙に個体による差があるのもハンドメイドらしい個性だと思います
メッキはTOEI基本の全部有り
ヘッド上下ラグ、クラウン、シートステー蓋、フォーク&ステー1/2
パールホワイトのカラーと金線でのラグ縁取りと箱線で、かなり迫力のあるデザインとなりました
ブレーキはグランボア・シュエットにマファックレプリカシュー付きタイプをTOEIオリジナルチドリで引いています
スポルティーフ系ツーリングバイクの教科書に乗る様なアッセンブルですね
ハンドルはニットウのユーロ80はカンパニョーロ専用品でステムはTOEIオリジナル90mm
カンパニョーロのエルゴパワーはシマノと違ってシフトワイヤーをハンドルバー後に持っていくことが出来るので、シフトワイヤーがキャリアの背もたれと干渉しにくいのが良いですね
現代的なスポルティーフのお手本となる様な1台になったと思います
ライトも特殊加工は行わずにあえてバッテリーライトのみにし、パーツアッセンブルも泥除けとキャリア以外はスチールロードバイクと同じ様な構成ですし、泥除けも分割や取り外し加工はしていないプレーンな取付けですから、トラブルも少ないと思います
この1台を一言で言い表すから「上質な実走派」でしょうか・・・
オーナー様、どうぞ良い旅を
【参考価格】約70万円
ところで、700x28Cタイヤと言えば、ランドナーでもスポルティーフでも良く採用されるサイズですね
タイヤが太いからランドナー、細いからスポルティーフというイメージが多いかもしれませんが、700x28Cは丁度その中間に位置づけられると思います
しかし、今回の自転車はスポルティーフとして製作しています
どこが違うのでしょうか?
ランドナーは日本語では「小旅行車」 スポルティーフは「快走車」ですから、「快走」を目指して製作されています
パーツアッセンブルやポジションにも答えの一部はあるのですが、最も違うのは「ハンドリング」
ランドナーは直進性や転びにくいことを重視して設計しますので、急なコーナーリングはシッカリと減速させる必要がありますが、運動性能を上げたスポルティーフではロードバイク程ではありませんが、スピーディーにコーナーリングが出来る様に設計しています
今回のフレームはフレームサイズ560mm(C-T)でトップチューブ545mm(C-C)ですが、ホイールサイズを同じにしてどの様に設計を変えているかご覧ください
上図が今回のフレームの設計図です(見やすくする為に寸法表示はかなり省いています)
ハンドリングで重要なヘッドアングルは72.5° フォークオフセットは55mm トレイルは50mmとしていて、シートアングルは73.5° リアセンターは430mm
右側の図は足先と泥除けのクリアランス(トークリアランス)ですが、ぶつかるかぶつからないかのギリギリのライン(実際はステーが張り出すので僅かに当たります)
直進性の高いランドナーでは、コーナーリングではシッカリとハンドルを切る様なハンドリングが必要ですので、ペダルを回している時でもハンドルを切りますから、このセッティングはありえません
脚を止めて外脚荷重で曲がりきる高速域でのコーナーリングを行うロードバイクやスポルティーフならではのセッティング
またクランク長が170mmとツーリングバイクの標準165mmよりも長いので、若干シートアングルを立たせて73.5°としていますが、オーナーによっては74°でも良いかと思います
その方がトークリアランスも僅かに伸びます
今度は同条件でランドナーとして設計した時
トークリアランスを確保する為に(フロントセンターを伸ばす)フォークオフセットは65mmで、ヘッドアングルは72°
トレイルも42mmしかありませんので、直進性が高くシッカリとハンドルを切って体重を傾けないと曲がれませんね
その分右図のトークリアランスはかなりの余裕が生まれました
クランク長を165mmとしたので、その分しーとアングルを0.5°寝かせて73°とし、泥除けとシートチューブのクリアランスが狭くなるのでリアセンターを435mmにセッティングしています
どこも、僅かに数mmや0.数°の違いばかりですが、この僅かな差の積み重ねが乗り味の違いになると思います
オーダー車の最初の1~2台では、なかなか差を感じ取れないかもしれませんが、だからと言って適当にご提供したくもありません
velocraftでは、こんな感じの設計をお客様へご提案しています
勿論、設計方法がこれが全てではありませんし、違う考え方も多くあります
オーダーメイドの自転車は同じオーナーで同じ使用目的で同じパーツであっても設計者が違うと、全く違う自転車が出来上がると思います
その辺がオーダーメイドの面白いところでもありますが、怖いところでもありますね!!